lyingman筹码:水稲‘コシヒカリ’の生育モデルの構築と 地域別移植

来源:百度文库 编辑:中财网 时间:2024/04/23 16:03:04
福岡農総試研報16(1997)

水稲‘コシヒカリ’の生育モデルの構築と 地域別移植及び成熟早限期マップの作成

田中浩平?原田皓二

(農産研究所)

 水稲品種‘コシヒカリ’の 3カ年の作期移動試験の結果から DVR法による生育ステージモデルを作成し,このモデルとメッシュ気候値を用いて‘コシヒカリ’の移植及び成熟早限期を推定した。平年的な気象条件下での‘コシヒカリ’の移植早限期は,日平均気温12~13℃の頃であったが,作柄の安定性を考慮した場合,13℃に達する時期と考えられた。これは,県南部の平坦地では 4月 2半旬,県北部の平坦地では 4月 2~ 3半旬である。この時期に移植した場合,成熟期は県南部の平坦地では 8月 2~ 3半旬,県北部の平坦地では 8月3~4半旬と推定された。

[キ-ワ-ド:コシヒカリ,作期,水稲,DVR法,メッシュ気候値]


    Developmental Stage Estimation Model in Rice Cultivar 'Koshihikari' and Early Limit Maps of Transplanting and Maturity Date in Fukuoka Prefecture. TANAKA Kohei and Koji HARADA (Fukuoka Agricultural Researh Center, Chikushino, Fukuoka 818, Japan) Bull. Fukuoka Agric. Res. Cent. 16: - (1997)  
    We cultivated 'KOSHIHIKARI' under the changing transplanting date from 1990 to 1992, and a developmental stage estimation model was developedby developmental rate (DVR) method. We estimated early limits of transplanting and maturity date using this model and 1km grid climate data. Following results were obtained. The daily mean temperature for early transplanting was 13℃. Early limit of transplanting date was 6 Apr. to 10 Apr. in the southern part of Fukuoka Prefecture, while 8 Apr. to 13 Apr. in the northern part. Early limit of maturity date was 8 Apr. to 13 Apr. in the southern part, while 13 Apr. to 18 Apr. in the northern part.

[Key words: climatic grid map, cropping season, developmental rate, 'KOSHIHIKARI', rice]


緒    言

 水稲良食味品種‘コシヒカリ’は, 6月移植の普通期栽培では倒伏し易く収量も不安定である4)。倒伏を軽減し収量を安定させるためには移植期を 5月上旬まで早める必要性が指摘4)され,早期栽培により作付拡大が進められてきた。九州北部地域での早期栽培の移植期は,現在, 4月中下旬が中心であるが,実需者からは早場米としての販売の有利性から収穫期の一層の早進化が要望されている。
 しかし,移植期を単に早めることは早進化に結びつかず,収量や品質への悪影響が懸念される。また,育苗などの管理労力も増大する。そのため,移植期の早限を明らかにする必要がある。そこで,本報では移植期の違いが成熟期の早進化,収量及び品質に及ぼす影響について明らかにした。次に,DVR法を用いて気象と生育の関係を解析し,気温及び日長をパラメータとした‘コシヒカリ’の生育ステージモデルを作成しモデルの適合性を検討した。さらに,このモデルを用いて移植早限期を推定し,メッシュ気候値を組み合わせて福岡県全域の移植と成熟早限期マップを作成した。


試 験 方 法

 1 水稲の耕種概要と生育,収量,品質
 試験は1990~1992年の 3カ年に福岡県農業総合試験場内の生産力解析圃場(中粗粒灰色低地土,SL/SL)において実施した。供試品種は‘コシヒカリ’で,移植期は1990年は 4月10日,4月25日,5月 8日,1991年は 4月 4日,4月24日,5月 8日,1992年は 4月 7日, 4月24日, 5月 7日の各年 3水準とし,栽植密度は㎡当たり22.2株で 1株 4本植とした。苗は 1箱当たり播種量150g,移植時苗齢1.9~2.1葉の稚苗を用い, 1区15㎡の 2区制で実施した。10a当たり窒素施肥量は,全区,基肥 5kg,穂肥 1.5kg+1.5kgの合計 8kgとした。各年とも出穂,成熟期及び,収穫後に収量,検査等級等を調査した。
 2 生育ステージモデル及び早限期マップの作成
  移植期から出穂や成熟期を予測する生育ステージモデルを作成するため,‘コシヒカリ’の 3カ年の出穂,成熟期と日平均気温,日長との関係を DVR(発育速度)法12)を用いて解析した。気象データは福岡県農業総合試験場生産環境研究所の観測値を用い,日長(可照時間)は清野6)の計算式から求めた。移植期から出穂期の DVRはパソコン用プログラム 2DIMNON8)を用いて,日平均気温及び日長を要因とする 2次元ノンパラメトリック回帰法7)で算出した。出穂期から成熟期の DVRはパソコン用プログラム NON-PARA96)を用いて日平均気温を要因とする 1次元ノンパラメトリック回帰法7)で算出した。
 得られた生育ステージモデルを用いて,平年的気象条件下における‘コシヒカリ’の生育シミュレーションを行い,地域別の移植早限期および早限期に移植した場合の成熟期(成熟早限期)を検討した。さらに,生育ステージモデルとメッシュ気候値5)を組み合わせて,福岡県全域の移植早限期および成熟早限期を 3次メッシュ単位で推定しマップを作成した。


結  果

 1  移植期が生育,収量及び品質に及ぼす影響
  第 1表に移植期と生育,収量および検査等級の関係を示した。移植期を 5月 8日から 4月24日に14日早めると,出穂期は 4日,成熟期は 5日早まった。稈長は 5cm短く倒伏は 1ランク軽減された。㎡当たり穂数,頴花数はやや増加したが千粒重は軽く,収量,検査等級は同等であった。移植期を 4月24日から 4月 7日に17日早めると出穂期は 4日,成熟期は 5日早まった。稈長,倒伏程度は同程度で,㎡当たり穂数はやや増加し,頴花数はやや減少した。千粒重はさらに軽くなり,収量は 4%減少した。検査等級は同程度であった。


  2  生育ステージモデルの適合性とモデルによる生育ステージの推定
 作成した生育ステージモデルを第 1図,第 2図に示した。このDVRモデルを用いて解析に用いた3カ年12水準の出穂期を推定すると推定誤差は平均 1.2日となり,成熟期の推定誤差は平均 2.3日となった(第 2表)。年次や移植期が異なる 3カ年の生育ステージの変動を高い精度で推定できており,平年の生育ステージを推定するために十分な精度が得られた。成熟期の推定値は実測値よりも遅い傾向があり,モデルの改良によりさらに精度が向上する可能性があることを示している。
 このモデルを用いて,福岡県農業総合試験場(筑紫野市)における,平年の気象条件下での移植期と成熟期の関係を推定した結果を第 3図に示した。日平均気温が12℃の早い時期に移植すると成熟期は 8月17日頃と推定された。12℃以下の時期に早植えしても,成熟期はこれ以上早くならず,成熟期の早限は 8月17日頃と考えられた。







考  察

 水稲が活着できる最低温度は,稚苗の場合12.5℃程度(日平均気温)とされている2)。九州における水稲の早進化に関する研究では,稚苗の移植早限期は平均気温12.1℃10),13.0℃1,11)などの報告があり,生育の進んだ苗を移植することにより,さらに数日の早進化が可能1,10,11)とされている。また,早植えは降霜や低温による植え傷みの危険性があり,活着限界に近い時期の移植では生育が不安定で減収した事例1,10)もみられる。
 本研究では生育ステージモデルを作成し,平年の気象条件下での生育ステージを推定したが,移植早限期は日平均気温12~13℃の頃と判断された。この時期は福岡県農総試では4月7~13日に当たるが,4月7日植はやや減収する傾向がみられた。移植期を 4月13日から 7日に早めると成熟期は 1日程度早まると推定されるが,減収の危険性や育苗の困難さを考えると,実用的な移植早限期は日平均気温が13℃に到達する頃であると思われる。
 そこで,移植早限期を日平均気温が13℃到達日として,福岡県全域の移植早限期及び成熟早限期を 3次メッシュで展開した(第 4,5図)。その結果,移植早限期(日平均気温13℃到達日)は県南部の平坦地では 4月 2半旬,県北部の平坦地では 4月2~3半旬と判断された。この時期に移植した場合,成熟期は県南部の平坦地では 8月 2~ 3半旬,県北部の平坦地では 8月3~4半旬と推定される。
 本報告で明らかにした‘コシヒカリ’の移植期,成熟期の早限は平年の気象条件の場合の推定値であり,毎年の変動を示すものではない。各年の生育を予測する場合には,アメダス観測値など各地の気象データを入手して予測9)を行う必要がある。本報告は生育モデルを用いて,‘コシヒカリ’の作型を広域で検討したものであるが,県下各地で早進化を図る場合の移植期や成熟期の判断が可能となった。福岡県は多くの水稲品種が多様な作期で栽培されている。他の品種についても今回の手法を用いて,最適な移植期や成熟期の策定を行うことが可能であり,現場に有用な情報となるものと思われる。今後,さらに精度向上を図る必要があるが,そのためには各地の生育データを収集してモデルの改良を進める必要がある。


引 用 文 献

1)舩場 貢?松原 功?立石 博?三好祐二 (1989) 長崎県におけるコシヒカリの早進化栽培技術.日作九支報56:21-24.
2)星川清親 (1990) 移植と活着. 生育/生理と生態, 稲作大百科Ⅱ(農文協編),東京:農文協,pp.71-75.
3) 金野隆光?竹沢邦夫 (1988) ノンパラメトリック法 による植物の感応特性評価と生育予測[NON-PARA8].農林水産試験研究におけるソフトウア開発?利用研究会講    演要旨集.90-91.
4)尾形武文?矢野雅彦?田中昇一 (1988) コシヒカリの移植時期別生育特性と安定多収栽培法第 1報 移植時期と生育?収量.九州農業研究50:30.
5)岡村敏夫(1987) メッシュ気候値.天気34:157-174.
6)清野 豁 (1987) 太陽エネルギーの気候学的計算法,太陽エネルギーの分布と推定(柴田和雄?内島善兵衛編),東京:学会出版センター,pp.127-144.
7)Takezawa,K and Tamura,Y (1991) Use of smoothin gsplines to estimate rates of development. Agric. For. Meteorol 57:129-145.
8)田村良文?竹沢邦夫?金野隆光(1988) 2次元ノンパ ラメトリック法発育解析プログラム《2DIMNON》.農林水産試験研究におけるソフトウア開発?利用研究会講演要旨集  .116-117.
9)田中浩平?清野 豁 (1994) アメダスデータを利用した早期コシヒカリの生育期予測.日作九支報60:13-16.
10)梅木佳良?牧 慧?坂本真一?村社久米夫?江藤博六 (1986) 暖地早期水稲の収穫期早進化技術第 1 報 移植時期と苗の種類.九州農業研究48:28.
11)若松謙一?深田健一郎?加治屋伸章?安庭 誠 (1991) 鹿児島県における早期水稲コシヒカリ栽培に関する研究第 1報 苗の種類と植付時期による熟期促進効果.九   州農業研究53:8.
12)Wit,C.T.de,R.Brouwer and F.W.T.Penning de Vries (1970) The simuration of photosynthetic systems. In Proceedings of the International Biological            Program/Production Process, Technical Meeting, Trebon. 47-70.